株価が毎日のように下がっていくとき、一番つらいのは含み損の金額そのものではありませんでした。「これがどこまで下がるのか、誰にも分からない」という状態に耐えることでした。
投資を始めて13年ほどの間に、大小さまざまな下落局面を経験してきました。この記事では特に、記憶に新しい2024年8月と2025年4月の下落を中心に振り返ります。
そのたびに感じたのは、暴落で資産を減らすかどうかを分けるのは相場を読む力ではなく、暴落が起きる前に何を決めていたかだということです。
この記事では、私自身が実際に「やってしまいそうになった」行動を5つ挙げながら、下落局面で何をすべきでないのかを整理します。
- 暴落時に取りたくなる5つの行動と、それぞれの落とし穴
- 2024年8月・2025年4月に私の資産が実際にどれだけ減ったか
- 下落局面で買い増しした銘柄のその後
- 暴落に備えて平常時に決めておきたい3つのこと
暴落のとき、なぜ「何かしたくなる」のか
暴落局面で私が最も不安だったのは、いったいどこまで下がるのか分からないことでした。
毎日のように株価が下がっていくのを見ていると、このまま下落が続くのではないかと感じます。すると頭に浮かんでくるのが「これ以上の損失を避けるために、一旦売却して株価が回復し始めたら買い戻せばいいのではないか」という考えです。
大きく下落した銘柄については、別の考えも浮かびました。ここまで下がるということは、そもそもこの銘柄はもうダメなのではないか。今のうちに損切りした方がいいのではないか、と。
今振り返ると、どちらも「何か行動を起こすことで、この不安を解消したい」という気持ちから出てきた考えでした。
未来の株価がどうなるかは誰にも分かりません。それなのに、下落の底が見えない不安に耐えられなくなると、将来のことを考えるよりもその場の不安を解消するために動きたくなってしまいます。
暴落時に難しいのは、株価が下がることそのものだけではありません。「何もしない」という選択を続けることの方が、実際にはずっと難しいのです。
暴落でやってはいけない行動5選
①「一旦売って、戻ったら買い戻す」と考える
暴落時に最も浮かびやすい考えです。私も何度か頭をよぎりました。
ただ、冷静に考えるとこれは株価のタイミングを読む行為です。しかも一度ではありません。売る時期を当てたうえで、今度は上昇に転じるタイミングまで当てなければならない。二度当てる必要があります。
未来の株価を予測できるのであれば、みんな投資で勝てるはずです。
さらに厄介なのは、売った後の心理です。売却したことで一時的に不安は消えますが、今度は「いつ買い戻すのか」という新しい判断を抱えることになります。株価が戻り始めると「もう少し下がるかもしれない」と待ってしまい、上がり続けると「今さら高値では買えない」と感じる。結果として買い戻せないまま相場から降りてしまうことになりかねません。
②下落率の大きさだけを理由に損切りする
大きく値下がりした銘柄を見ると、その企業自体に問題があるように感じられます。
しかし2024年8月も2025年4月も、私のポートフォリオはほぼ全面安でした。ほとんどの銘柄が同じように下がっている状況では、下落率の大きさは企業の良し悪しをほとんど示していません。市場全体が一斉に売られているだけだからです。
見るべきなのは株価の下落率ではなく、購入時に描いていた投資ストーリーが崩れているかどうかです。企業の業績や財務状況、配当方針に変化がないのであれば、株価が下がったことだけを理由に売却する必要はありません。
一方で、企業固有の理由で業績が悪化しているのであれば話は別です。その判断のためには、株価ではなく決算資料を見る必要があります。
③不安を消すために衝動的に動く
①も②も、突き詰めれば同じ問題に行き着きます。不安を解消するために何か行動を起こしたくなる、という心理です。
暴落時の行動には、明確な判断根拠があって動く場合と、不安に耐えられなくなって動く場合の2つがあります。後者はたとえ結果的に正しかったとしても、次に同じ状況が来たときに再現できません。
自分が今どちらの理由で動こうとしているのか。この問いを一度立てるだけで、衝動的な判断はかなり減らせると感じています。
④余力資金を一度に使い切る
暴落は買い場でもあります。ただし、買い方には注意が必要です。
底がどこかは誰にも分からないので、「今が底だ」と判断して余力資金を全て注ぎ込むと、そこからさらに下落したときに何もできなくなります。本当に安く買えるはずの場面で手が出せないという、最も残念な状態です。
私は下落局面で買い増しをするときも、資金を全て使い切らないようにしています。さらなる下落があっても買い増しできる余力を残しながら、少しずつ買っていく。この考え方は「投資で大失敗しなかった理由|地味な選択を続けてきました」でも触れた、私の投資の基本方針でもあります。
⑤暴落してから判断基準を考え始める
これが最も大きな問題だと考えています。
暴落の渦中は、判断力が最も落ちている状態です。その状態で「売るべきか、買うべきか」を一から考え始めても、まともな判断はできません。恐怖に引きずられた結論しか出てこないからです。
暴落が起きてから判断するのではなく、暴落する前にある程度のシナリオを考えておく。これが暴落対策の中心だと思っています。
2024年8月・2025年4月、資産はどれだけ減ったか
直近の2回の下落局面で、実際に自分の資産がどう動いたかを挙げます。いずれも株式と投資信託の評価額で、現金は含みません。
2024年8月(令和のブラックマンデー)
- 個別株:約2500万円 → 約2400万円
- 投資信託:約680万円 → 約590万円
2025年4月(トランプ関税による下落)
- 個別株:約3200万円 → 約2900万円
- 投資信託:約820万円 → 約710万円
日経平均株価で見れば1日の下げ幅が過去最大となった2024年8月の方が派手でしたが、私のポートフォリオでは2025年4月の方が下落幅は大きくなりました。2024年8月が1日で急落して翌日には大きく戻した短期集中型だったのに対し、2025年4月は年初から数か月かけてじわじわ下げ続けたためです。
投資信託の下落率が個別株より大きい点も特徴でした。私が保有しているのはeMAXIS Slimシリーズなど海外株式のインデックスファンドが中心で、株価の下落に加えて円高の影響も重なったためです。値動きの理由が異なる資産を持つことの意味については、「インデックス投資とは?初心者が知るべき始め方と失敗しない方法」で詳しく解説しています。
どちらの局面でも、私は売却も損切りもしていません。
事前にルールを決めていたから買い増しできた
売らなかっただけではなく、いくつかの銘柄では買い増しをしました。
私は銘柄を購入するとき、企業の財務状況や業績を確認したうえで「この企業ならどの程度まで株価が下がったら買い増したいか」という水準も想定しています。買い増し候補は普段からリストにして持っています。
そのため暴落時には「売るかどうか」を一から考えるのではなく、あらかじめ決めていた基準に照らして考えるだけで済みました。実際に買い増ししたのは次の銘柄です。
2024年8月に買い増しした銘柄
| 銘柄 | 買値 | 現在の株価 |
|---|---|---|
| INPEX | 1750円 | 約3780円 |
| エクシオグループ | 1515円 | 約2610円 |
| AREホールディングス | 1760円 | 約3810円 |
2025年4月に買い増しした銘柄
| 銘柄 | 買値 | 現在の株価 |
|---|---|---|
| 竹内製作所 | 4333円 | 約7620円 |
| 三井住友トラスト・ホールディングス | 966円 | 約1801円 |
| 住友精化 | 895円 | 約1465円 |
いずれも現在は含み益となっています。
ただし、ここで強調したいのは結果の良さではありません。買い増しをするときも、下落率が大きい銘柄に集中させるようなことはしませんでした。準備していたリストの中から分散を意識して選び、余力を残しながら購入しています。
暴落時に買い増すこと自体、簡単ではありません。さらに下がる可能性があることは分かっているからです。それでも「下がったから怖くなって売る」のではなく、「事前に決めていた条件に当てはまったから買う」という行動に変えられたのは、平常時に基準を作っておいたおかげでした。
暴落に備えて平常時にやっておきたい3つのこと
暴落が来てからできることは、実はほとんどありません。備えは全て平常時に済ませておく必要があります。
1. 投資ストーリーを持っておく
なぜこの企業に投資するのかを、株価以外の理由で説明できるようにしておきます。業績、財務状況、配当方針。この根拠があれば、暴落時に「ストーリーが崩れたかどうか」で判断できます。
2. 買い増しの水準を決めておく
どこまで下がったら買うのか。逆にどこまでなら保有を続けるのか。この2つを平常時に考えておくだけで、暴落時の判断は驚くほど楽になります。
3. 買い増しできる資金を残しておく
暴落時に動けるかどうかは、結局のところ資金があるかどうかで決まります。常に全額を投資に回すのではなく、下落局面で使える余力を持っておくことが必要です。
こうした準備の考え方は、暴落時に限った話ではありません。資産形成において何を重視すべきかという、より大きな話につながっています。「資産形成で最も大切な考え方とは?」も参考にしてください。
まとめ
暴落は避けられませんし、株価がどこまで下がるのかも誰にも分かりません。
だからこそ、暴落を予測して避けようとするのではなく、暴落が起きることを前提に準備しておくことが大切だと考えています。準備さえしておけば、恐怖で売ってしまうのではなく、場合によっては買い増しのチャンスに変えることもできます。
そして何より大切なのは、暴落で投資をやめてしまわず、相場に居続けることです。長期投資において、これに勝る条件はないと感じています。
これから投資を始める方は、まず何から手をつけるべきかを「投資初心者は何から始めるべきか?最短ルートを解説」で確認してみてください。
なお、実際に暴落の渦中で何を考え、どう乗り越えたのかという心理面については、近日公開予定の記事で詳しく書く予定です。
